
第一章 総則
- (目的)
第一条 この法律は、津波、高潮、波浪その他海水又は地盤の変動による被害から海岸を防護するとともに、海岸環境の整備と保全及び公衆の海岸の適正な利用を図り、もつて国土の保全に資することを目的とする。
- (定義)
第二条 この法律において「海岸保全施設」とは、第三条の規定により指定される海岸保全区域内にある堤防、突堤、護岸、胸壁、離岸堤、砂浜(海岸管理者が、消波等の海岸を防護する機能を維持するために設けたもので、主務省令で定めるところにより指定したものに限る。)その他海水の侵入又は海水による侵食を防止するための施設(堤防又は胸壁にあつては、津波、高潮等により海水が当該施設を越えて侵入した場合にこれによる被害を軽減するため、当該施設と一体的に設置された根固工又は樹林(樹林にあつては、海岸管理者が設けたもので、主務省令で定めるところにより指定したものに限る。)を含む。)をいう。
2 この法律において、「公共海岸」とは、国又は地方公共団体が所有する公共の用に供されている海岸の土地(他の法令の規定により施設の管理を行う者がその権原に基づき管理する土地として主務省令で定めるものを除き、地方公共団体が所有する公共の用に供されている海岸の土地にあつては、都道府県知事が主務省令で定めるところにより指定し、公示した土地に限る。)及びこれと一体として管理を行う必要があるものとして都道府県知事が指定し、公示した低潮線までの水面をいい、「一般公共海岸区域」とは、公共海岸の区域のうち第三条の規定により指定される海岸保全区域以外の区域をいう。
3 この法律において「海岸管理者」とは、第三条の規定により指定される海岸保全区域及び一般公共海岸区域(以下「海岸保全区域等」という。)について第五条第一項から第四項まで及び第三十七条の二第一項並びに第三十七条の三第一項から第三項までの規定によりその管理を行うべき者をいう。
- (海岸保全基本方針)
第二条の二 主務大臣は、政令で定めるところにより、海岸保全区域等に係る海岸の保全に関する基本的な方針(以下「海岸保全基本方針」という。)を定めなければならない。
2 主務大臣は、海岸保全基本方針を定めようとするときは、あらかじめ関係行政機関の長に協議しなければならない。
3 主務大臣は、海岸保全基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
4 前二項の規定は、海岸保全基本方針の変更について準用する。
(海岸保全基本計画)
第二条の三 都道府県知事は、海岸保全基本方針に基づき、政令で定めるところにより、海岸保全区域等に係る海岸の保全に関する基本計画(以下「海岸保全基本計画」という。)を定めなければならない。
2 都道府県知事は、海岸保全基本計画を定めようとする場合において必要があると認めるときは、あらかじめ海岸に関し学識経験を有する者の意見を聴かなければならない。
3 都道府県知事は、海岸保全基本計画を定めようとするときは、あらかじめ関係市町村長及び関係海岸管理者の意見を聴かなければならない。
4 都道府県知事は、海岸保全基本計画のうち、海岸保全施設の整備に関する事項で政令で定めるものについては、関係海岸管理者が作成する案に基づいて定めるものとする。
5 関係海岸管理者は、前項の案を作成しようとする場合において必要があると認めるときは、あらかじめ公聴会の開催等関係住民の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。
6 都道府県知事は、海岸保全基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表するとともに、主務大臣に提出しなければならない。
7 第二項から前項までの規定は、海岸保全基本計画の変更について準用する。
- (海岸保全区域の指定)
第三条 都道府県知事は、海水又は地盤の変動による被害から海岸を防護するため海岸保全施設の設置その他第二章に規定する管理を行う必要があると認めるときは、防護すべき海岸に係る一定の区域を海岸保全区域として指定することができる。ただし、河川法 (昭和三十九年法律第百六十七号)第三条第一項 に規定する河川の河川区域、砂防法 (明治三十年法律第二十九号)第二条 の規定により指定された土地又は森林法 (昭和二十六年法律第二百四十九号)第二十五条第一項 若しくは第二十五条の二第一項 若しくは第二項 の規定による保安林(同法第二十五条の二第一項 後段又は第二項 後段において準用する同法第二十五条第二項 の規定による保安林を除く。以下次項において「保安林」という。)若しくは同法第四十一条 の規定による保安施設地区(以下次項において「保安施設地区」という。)については、指定することができない。
2 都道府県知事は、前項ただし書の規定にかかわらず、海岸の防護上特別の必要があると認めるときは、保安林又は保安施設地区の全部又は一部を、農林水産大臣(森林法第二十五条の二 の規定により都道府県知事が指定した保安林については、当該保安林を指定した都道府県知事)に協議して、海岸保全区域として指定することができる。
3 前二項の規定による指定は、この法律の目的を達成するため必要な最小限度の区域に限つてするものとし、陸地においては満潮時(指定の日の属する年の春分の日における満潮時をいう。)の水際線から、水面においては干潮時(指定の日の属する年の春分の日における干潮時をいう。)の水際線からそれぞれ五十メートルをこえてしてはならない。ただし、地形、地質、潮位、潮流等の状況により必要やむを得ないと認められるときは、それぞれ五十メートルをこえて指定することができる。
4 都道府県知事は、第一項又は第二項の規定により海岸保全区域を指定するときは、主務省令で定めるところにより、当該海岸保全区域を公示するとともに、その旨を主務大臣に報告しなければならない。これを廃止するときも、同様とする。
5 海岸保全区域の指定又は廃止は、前項の公示によつてその効力を生ずる。
- (指定についての協議)
第四条 都道府県知事は、港湾法 (昭和二十五年法律第二百十八号)第二条第三項 に規定する港湾区域(以下「港湾区域」という。)、同法第三十七条第一項 に規定する港湾隣接地域(以下「港湾隣接地域」という。)若しくは同法第五十六条第一項 の規定により都道府県知事が公告した水域(以下この条及び第四十条において「公告水域」という。)、排他的経済水域及び大陸棚の保全及び利用の促進のための低潮線の保全及び拠点施設の整備等に関する法律(平成二十二年法律第四十一号)第九条第一項の規定により国土交通大臣が公告した水域(以下この条及び第四十条において「特定離島港湾区域」という。)又は漁港漁場整備法 (昭和二十五年法律第百三十七号)第六条第一項 から第四項 までの規定により市町村長、都道府県知事若しくは農林水産大臣が指定した漁港の区域(以下「漁港区域」という。)の全部又は一部を海岸保全区域として指定しようとするときは、港湾区域又は港湾隣接地域については港湾管理者に、公告水域については公告水域を管理する都道府県知事に、特定離島港湾区域については国土交通大臣に、漁港区域については漁港管理者に協議しなければならない。
2 港湾管理者が港湾区域について前項の規定による協議に応じようとする場合において、当該港湾が港湾法第二条第二項 に規定する国際戦略港湾、国際拠点港湾又は重要港湾であるときは、港湾管理者は、あらかじめ国土交通大臣に協議しなければならない。
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